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精神分析学

精神分析学(せいしんぶんせきがく)は、ジクムント・フロイト(Sigmund Freud)によって創始された人間心理の理論と治療技法の体系を指す。広義には、フロイト以後の分派を含めた理論体系全体も指す。

20世紀前半の精神医学・心理学・人文分野に多大な影響を及ぼしたが、反面、精神疾患の治療効果には疑問も多く、1970年代に薬物療法が発達し、精神分析学の手法で改善が見られない患者が治療できるようになると、精神医学領域における影響力は徐々に衰えるようになった。

以降、脳科学や認知心理学によって、精神分析学の有効性、科学性、客観性が疑問視されるようになると、精神分析学の影響が大きかったアメリカにおいても、DSM-IV(精神障害の診断と統計の手引き)で神経症の概念が否定されるようになり、患者の希望した薬物治療を拒否して精神分析に専念した治療者が、患者との裁判で敗訴したこともあって、精神分析医の数は減少した。

現在、精神医学が薬物療法や、生物学的理論に偏りすぎたことへの反動として、また、摂食障害や人格障害などの薬物療法のみでは治療が困難な疾患については、精神分析学の影響が限定的な認知行動療法が適用されつつある。そのため、日本国内においては、精神科の臨床でフロイト当時の精神分析を使う医師は少ない。ただし、臨床心理士などが精神分析学の概念を用いることはあるし、防衛機制のように、人が自分の心を守ろうとする働き自体は、人の日常生活で一般的に見られるものである。

目次 [非表示]
1 概略
2 パーソナリティ理論
3 フロイト治療過程で生じるとされる現象
4 フロイト治療の技法
5 フロイト以後の精神分析 
5.1 フロイトからの離反者
6 精神分析への批判
6.1 精神分析の非客観性
6.2 古い科学哲学信奉者の批判と、今日の科学哲学的、現象学的解釈
6.3 精神力動的治療の有効性
6.4 精神分析の費用対効果
6.5 治療仮説による記憶の捏造
7 人文学的一般教養としての精神分析
8 関連項目
9 参考文献
10 リンク


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概略
フロイトによれば、人間には無意識の過程が存在し、人の行動は無意識によって左右されるという基本的な仮説に基づいている。フロイトは、ヒステリー(現在の解離性障害や身体表現性障害)の治療に当たる中で、人は意識することが苦痛であるような欲望を無意識に抑圧することがあり、それが形を変え神経症の症状などの形で表出されると考えた。そのため、無意識領域に抑圧された葛藤などの内容を自覚し、表面化させて、本人が意識することによって、症状が解消しうるという治療仮説を立てた。

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パーソナリティ理論
局所論
意識、前意識、無意識

構造論
自我、超自我、イド、防衛機制

心理性的発達段階
エディプスコンプレックス

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フロイト治療過程で生じるとされる現象
フロイトは治療において、患者と治療者の間でいくつかの特徴的な現象が観察されるとしている。

転移(Transference)- フロイトは、面接過程において、患者が過去に自分にとって重要だった人物(多くは両親)に対して持った感情を、目前の治療者に対して向けるようになるという現象を見いだした。これを転移(または感情転移)という。転移は、患者が持っている心理的問題と深い結びつきがあることが観察されたことから、その転移の出所を解釈することで、治療的に活用できるとされた。転移の解釈は、精神分析治療の根幹とされている。
逆転移(Counter Transference)- フロイトは、治療者の側に未解決な心理的問題があった場合、治療場面において、治療者が患者に対して転移を起こしてしまう場合があることを見いだした。これを逆転移という。フロイトは逆転移は治療の障害になるため排除するべきものであり、治療者は患者の無意識が投映されやすいように、白紙のスクリーンにならなければならないと考えた。しかし、そうした治療者の中立性に関しては、弟子の中にも異議を唱えたものが多かった。
現代の精神分析では、逆転移の定義はさらに広げられ、面接中に治療者が抱く感情の全てを含むものになっている。そして、逆転移の中には患者側の病理によって治療者の中に引き起こされる逆転移もあり、そうした逆転移は治療的に活用できるとする考えが主流を占めるようになっている。
抵抗(Resistance)- 心理的問題の解決のために治療者のもとを訪れたにも関わらず、患者が治療過程が進むことを無意識的に拒んでしまうことを抵抗という。これは、無意識に目を向けることには苦痛が伴うために起こると考えられている。この抵抗をいかに乗り越えるかが、治療過程の重要な局面となる。
退行(Regression)- 高度に発達した精神が、以前に経過してきた地点に回帰する現象を指して言う。退行の原因にはいろいろあるが、固着と大きな関係があるとされている。固着はリビドーの相当の量がある発達段階に残されて来ている事を意味するので、固着が強い人ほど内的や外的圧力に容易に屈し、その時点に退行しやすくなり、それだけ自我が脆弱だと言える。健康な人間でも睡眠時、食事、排便時、入浴時などリラックスできる時には軽い退行が起きる。健康な退行と病的な退行は、その固着点から正常な精神状態に立ち返る事が出来るかどうかで決まる。また、面接過程において自然と精神は未熟な精神の発達段階に退行する事がわかっており、これを治療的退行と呼び、精神分析の治療に欠かせない要素となっている。治療的退行時には患者が平生感じることのない感情や衝動に駆られる事が多い。
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フロイト治療の技法
自由連想法 - 患者が寝椅子などに横たわり、リラックスした状態で、何気なく心に浮かんできたあらゆることを言語化して語るように要求されるという方法の事。たとえば、窓の外の雲から空を連想し、空から水色が浮かび、といった連想を、患者が治療者に語るもの。
このような方法により、過去に抑圧された無意識の内容が表出され、現在の症状が解消するというのが、フロイトの考え方である。フロイトは当初、無意識を意識化する方法として、催眠を取り入れていたが、催眠の効果には個人差が大きく、またいったん症状が消失しても、後に再びもとの状態に戻ってしまうことを経験したので、フロイトは自由連想法を考案した。現在の精神分析では、対面による対話においても自由連想法と類似の効果があると考えられるようになったため、寝椅子を用いた自由連想法が使われることは少なくなっている。

解釈
徹底操作
夢分析
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フロイト以後の精神分析 
狭義には、精神分析はこのフロイト理論のみを指すが、広義には、フロイト理論の流れをくんだ様々な分派を総称して指す。フロイト以後、彼の弟子たちはそれぞれの視点からフロイト理論を批判し、新たな理論を発展させていった。対象とする疾患も、フロイトが主に取り組んだ成人の神経症にとどまらず、子供、老人、精神病、境界例へと広がっていった。発達障害や精神病圏の患者に対してはその成果は芳しくなかったが、境界例に対してはその理解を飛躍的に進展させる成果をあげている。

フロイト以後の分派は、古典的フロイト派、自我心理学、新フロイト派、対象関係論、自己心理学が代表的である。

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フロイトからの離反者
アルフレート・アドラー
カール・グスタフ・ユング
ヴィルヘルム・ライヒ
オットー・ランク
ユングの分析心理学や、アドラーの個人心理学は、理論上の相違が大きいため、広義の精神分析には分類されていない。しかし、無意識の存在を想定していることから、深層心理学の一派として分類される。
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精神分析への批判
精神分析は、その再現性や、効果の客観性、治療期間や費用、無意識の有無や解釈、その葛藤の表出が治療に結びつくかなど、多くの点について批判に晒されてきた。また、精神療法の中には精神分析のように、病気の原因の追求を是としない物もあり、治療の根本的な考え方が異なる場合もある。

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精神分析の非客観性
精神分析の理論は、基本的に人文科学的な手法を用いている。 理論の根拠情報が、数値データのような客観的指標ではなく、患者の発言内容や表情、治療者の受ける印象などの主観的な情報を主体としている。 そのため他の人文科学と同様に、数学的な体系には馴染みにくく(ジャック・ラカンは精神分析に数学を持ち込もうとしたが、全くのでたらめであったため失笑を買った)、客観的な実証性を確保しにくい。

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古い科学哲学信奉者の批判と、今日の科学哲学的、現象学的解釈
かつては真の科学と疑似科学とは反証可能性によって区別可能であると信じられてきた。カール・ポパーが唱えたその教義下においては、「反証可能性を持つ=真の科学、もたない=疑似科学である」という単純な二項信仰があった。この立場に立てば精神分析学は反証可能性を持たないので、「精神分析は疑似科学である」。

しかしデュエムやクワインによって「ある仮説を反証する決定的な実験などはそもそも存在しない」と指摘(デュエム-クワイン・テーゼ)されており、ポパーの伝統的立場や教義は様々な立場のうちの1つ(クラシカルな1つ)であるに過ぎない。

また今日のエビデンスベースドの立場からすれば、モデルベースドの「正しさ/誤り」が臨床的な現象に何の意味も持たない事は明らかなので、異なる立場からそれらの「正しさ/誤り」を指摘しあう意味は臨床的に存在しない。

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精神力動的治療の有効性
コクランライブラリーは現時点で産後うつ病に対する精神力動的精神療法の効果について、「治療効果がありそうだ」としている。 この結果は(個人)認知行動療法、個人精神療法、非指示的カウンセリングと並んでいる。 またグループ認知行動療法、光療法、母子交流指導、配偶者とともに行う心理教育、電話による母親同士のピアサポートの効果について、「効果は不明」としているところから、少なくともそれらのアプローチよりも優先されるべきである。

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精神分析の費用対効果
また医療界において費用対効果という観点も重要視されるようになっており、有効性のみならず、他の治療と比較したときの経済性についても検討が必要である。

このように精神分析の有効性についてはまだ結論を下せる段階にないが、現在世界各地で臨床研究がなされている。

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治療仮説による記憶の捏造
父親からの性的虐待を仮定した精神分析家がそれを誘導する面接を行ったところ、実際に患者がその仮定に合致する記憶を呼び覚まし、その記憶に基づいて父親を訴えるという事件が起こった。しかし後の調査でその証拠は発見されず、父親が勝訴した。 また似たような出来事は精神分析に端を発する認知療法でも「スキーマが病気に先立って存在するという治療仮説」など様々に形を変えながら多数存在している。 人間の記憶はしばしば捏造される事があるので、治療仮説(原因仮説)はしばしば危険を伴っているので注意が必要である。

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人文学的一般教養としての精神分析
以上のように、臨床療法としての精神分析は、現在では医学の世界では広い支持を得ているとはいえないものの、思想家としてのフロイト、思想としての精神分析学理論は人間理解、人文諸学、心理学などにおいて現代でも依然として影響力を持ち、世相や文化、芸術作品や犯罪など様々な事象の理解や批評に援用される。

そのことに注目した現代哲学者のミシェル・フーコーなどは精神分析を純粋な学問とはいえない一種のリベラル・アート(liberal art=一般教養)のようなものと捉えるべきだと主張している。

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関連項目
精神医学
心理学
臨床心理学
心理療法
無意識
トラウマ
リビドー
自己同一性
疑似科学
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参考文献
トリグベ・ブラトイ. 精神分析技法の基礎(現代精神分析双書 ). 岩崎学術出版社. 1971年
馬場礼子. 精神分析的心理療法の実践 クライエントに出会う前に . 岩崎学術出版社. 1999年
北山修. 精神分析理論と臨床. 誠信書房. 2001年
小此木啓吾. 現代精神分析の基礎理論(精神医学叢書 ). 弘文堂 . 1985年
小此木啓吾. 精神分析の成立ちと発展(精神医学叢書 ). 弘文堂 . 1985年
Leichsenring F, Leibing E. The effectiveness of psychodynamic therapy and cognitive behavior therapy in the treatment of personality disorders: a meta-analysis. Am J Psychiatry. 2003,160,pp1223-32
古川壽亮. エビデンス精神医療:EBPの基礎から臨床まで. 医学書院. 2000年
ハンス・アイゼンク 『精神分析に別れを告げよう―フロイト帝国の衰退と没落』 ISBN 4891750855 ISBN 4826502281
ロルフ・デーゲン 『フロイト先生のウソ』 (原題=『心理学間違い事典』)ISBN 4167651300
ポール・リクール『フロイトを読む--解釈学試論』.新曜社.1982年
『危ない精神分析―マインドハッカーたちの詐術』
『抑圧された記憶の神話―偽りの性的虐待の記憶をめぐって』
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リンク
日本精神分析協会

『お買い物へ行こう~♪』
―幸せの見つけ方―
(無料ワーク)
 

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